骨粗鬆症

骨粗鬆症(骨そしょう症)について 札幌琴似整形外科 髙田 潤一

骨粗鬆症(骨そしょう症)とは
骨粗鬆症(骨そしょう症)とは

骨粗鬆症は、骨がもろくなって、骨折をしやすくなる病気です。
最初は自覚症状がありませんが、ひどくなると骨折を起こし、寝たきりの原因となる場合もあります。

骨粗鬆症に特に注意が必要な人

次の項目に当てはまる場合は、特に骨粗鬆症に注意が必要です。

  • 閉経後の女性
  • 高齢者(男性も)
  • やせ型
  • 身長が2cm以上低下
  • 身内に骨粗鬆症がいる
  • 運動不足
  • カルシウム摂取不足
  • アルコール
    コーヒーの多飲
  • 喫煙
  • 日光照射不足
  • ステロイドの使用
  • 胃切除歴
    糖尿病などを合併
骨粗鬆症の診断方法
骨粗鬆症の診断方法

骨粗鬆症の診断には骨密度測定が必要です。それと同時に、脊椎X線像、血液検査も行います。
脊椎X線を撮影する目的は、背骨が自然と潰れてくる“いつの間にか骨折”が生じていないかを判定するためです。血液検査は、血清カルシウム値や骨代謝マーカーを測定します。骨代謝マーカーとは、骨の吸収や形成の状態を判定するものです。また、治療薬を使用している場合、副作用が生じていないかを検査します。
骨密度は、若い人の平均値(若年成人平均値)を100%として、減少した割合を評価します。
骨粗鬆症と診断されるのは、次の三つのいずれかに該当する場合です。

  • ①脊椎骨折(圧迫骨折)または大腿骨近位部骨折(股関節)をした場合
  • ②橈骨遠位端骨折(手首)などの骨折歴がある場合は、若年成人平均値の80%未満
  • ③骨折をしたことがない場合は、若年成人平均値の70%以下

骨密度に関して、年齢相応だから大丈夫ということはありません。また、「何歳の骨」という表現も誤解を与えるため用いられていません。

症状

骨粗鬆症は深く静かに進行していきます。進行すると、弱い外力で骨折が生じます。骨折は、脊椎(背骨)、手首、股関節、肩関節などに多く発生します。また、背骨の骨折では、転んだりしなくても徐々に潰れてくるタイプのいわゆる“いつのまにか骨折”が多くあります。身長が低下してきた場合は、要注意です。身長が低下すると、心臓や肺が圧迫されてしまいます。また、食道や胃にも障害が生じて、逆流性食道炎(胸やけ、げっぷ)の原因にもなります。
このような心臓、肺、胃腸障害は、食欲の低下による栄養状態の悪化、外出を控えて閉じこもりがちになるなど、生活の質(QOL)の低下をもたらします。さらに、運動器症候群(ロコモティブシンドローム、通称ロコモ)によって介護を受ける原因ともなります。

予防

骨粗鬆症の予防の三本柱は、カルシウムとビタミンDの摂取、運動、適度な日光浴です。検査の結果、骨粗鬆症ではなかった人は予防に心がけましょう。また、骨粗鬆症と診断され、薬物療法が必要な場合もカルシウムとビタミンDの摂取、運動、適度な日光浴は薬の効果を高めるためにも必要なことです。

カルシウムとビタミンDの摂取

  • カルシウムとビタミンDの摂取
  • 栄養に注意している人でも、カルシウムの摂取だけがどうしても不足してしまうのが現状です。厚生労働省の栄養調査によりますと唯一カルシウムだけは所要量に達していません。カルシウム不足の状態が続くと骨からどんどんカルシウムを取り出すため、骨粗鬆症の原因になります。
    カルシウムは乳製品や大豆製品、小魚、緑黄野菜、海草などに多く含まれています。なかでも、牛乳はカルシウム補給の代表的な食品です。牛乳が飲めない場合は、ヨーグルトやチーズなどの牛乳以外の乳製品を試してみてください。それも無理な場合は、小魚や海草、豆腐や納豆、緑黄野菜などのカルシウムをたくさん含む食品をとるように心がけます。カルシウムの摂取とともにカルシウムの吸収を助けるビタミンDを多く含む食品を取ることも大切です。ビタミンDは魚(サケ、サバなど)、きのこ(干し椎茸など)に多く含まれます。

運動

  • 運動
  • 運動は骨の血液の流れをよくし、骨をつくる細胞の働きを活発にします。さらに、運動によって筋肉がきたえられ、転びにくくなり、骨折の防止にもつながります。
    運動は、散歩やパークゴルフなどの趣味の範囲で行いましょう。目安としては、散歩なら1日30分間くらいで十分です。大切なことは、毎日楽しみながら続けることです。運動をするときは、動きやすい服装、靴を使用し、少しずつ量を増やすようにしましょう。自分の体力やその日の体調にあわせて、無理のない範囲で行いましょう。

日光浴

  • 日光浴
  • ビタミンDは食事からだけではなく、日光浴により皮膚でもつくられます。
    夏なら木陰で30分、冬なら手や顔に1時間程度、日に当たるだけで十分です。
    ただし、ガラスは紫外線をあまり通さないため、窓越しの日光浴ではあまり効果は望めません。
治療薬
  • 治療薬
  • 骨粗鬆症と診断された場合は、カルシウムとビタミンDの摂取、運動、適度な日光浴だけでは骨折リスクが十分に低下しませんので、薬剤が必要となります。病院で使用する薬剤は、使用した場合と使用しない場合での骨折の発生を比較して、使用した場合には明らかに骨折が低下したことが証明されたことにより厚生省が承認したものです。
    骨粗鬆症の治療薬は多くの種類があります。投与間隔には、毎日、週1回、週2回、月1回、6か月に1回、年1回のものがあります。また、薬剤の使用方法として経口剤(飲み薬)、注射剤(自己注射または病院での注射)があります。
    どの薬剤を選択するかは、骨折歴、骨密度などの骨粗鬆症の状態をもとに主治医と相談して決定されます。